広東ゴルファー日記

香港とゴルフが好きな医学生投資家が毎日のことをつらつらと書く日記です。

【大学生活】東大入学式の祝辞を医学生が今さらレビュー

こんばんは。広東ゴルファーです。

 

皆さん、以前話題になった東京大学の入学式のスピーチをご存知でしょうか?

www.u-tokyo.ac.jp

 

女子は女子であるだけで冷遇されている。という主旨の話をして話題になりましたね。

 

背景には「東京医科大学」の裏口入学とその背後にあった女子に厳しい入学制度というのがありました。

 

さて、今さらながらこの祝辞の内容を追ってみると「有意義な部分」と「意味不明な部分」があることがわかります。

1.ここが変だよその祝辞

先に「意味不明な部分」について述べます。

冒頭、男子に対する女子の合格率、という話をされています。この話の中で全国的にみると医学部の合格率は平均して男子の方が1.2倍の合格率である、という話が出て来ます。

 

まあこれは事実としてそうなのでしょう。個人的には同期の8割が男子2割が女子、という状況ですのでもっとひどいのでは?と思っていたのですがそもそもの受験者数が大きく違うということでしょう。

 

さて、東京大学医学部(理科三類)において男子の合格率は女子の合格率の1.03倍だそうです。全国平均1.2倍に対して低いものの公平性を示す理論値である1.0倍を上回っています。

 

「この数字をどう読み解けばいいのでしょうか?」とおっしゃっています。結論から申しまして「有意差は認められない」ということになるでしょう。

 

有意差を述べるためにはより詳細なデータでもって検定を行う必要があるのですが、AVG1.2倍のところ1.03倍ですからこれを持って「東京大学医学部は他に比べて女子が入学しにくい」とは言えず、むしろ「他大よりも女子の合格率が高い」ということが言えると思います。

 

また、「そもそも1.0倍を上回っていることが問題だ」というご指摘もあるかもしれませんが、医学科の定員というのはどの大学を比較しても100人程度であり、5倍の倍率だとしても500人程度であります。

 

この程度の母数から1.0倍を上回っているのには何か黒い力が働いているからだ、と結論付けるのはかなり乱暴です。逆に言えば「1.0倍を下回った医学部では女子優遇措置をとっている」という話にはならないでしょう。

 

なぜなら「医者という職業は女子の方が働く時間が短くて社会にとって不利益であるという話が根底にある」というのが一般論で「男の医者より女の医者の方が良い」というのはあまり聞かない話ですから。

 

よって少なくとも東京大学医学部において女子冷遇が行われているという結論は間違いの可能性が高い、というのが「統計学的結論」になります。統計学は大事ですね(笑)

 

2.祝辞としてよい部分

統計学的処理ができていないことは非常に残念ですし、東大生、東大の教員なら入学式の段階で「え、有意差なくね?」と思った方は多いでしょう。

 

しかしながら最後の部分「メタ知識」という部分は素晴らしい話だと思いました。

 

メタ知識とは何でしょうか?それは「自分はこの知識・情報を得ることができる」という知識です。

言い換えるならば課題解決能力のことです。

 

当たり前のことですが人間だれしもわからないことに出くわします。例えばこの「出くわす」という言葉を英語にすると何でしょうか?「come across」とか「encounter」と表現するのが一般的でしょう。

 

じゃあ、仮にこれらの言葉を知らなかったときにどうしたら知ることができるでしょうか?簡単なことです。Googleせんせーに「出くわす 英語」と入力しましょう。完璧な回答が返ってきます。

 

さて、ではここでインターネットが使えない人がいるとしましょう。その人はどうするか。辞書を引くか、人に聞くか、まだ対処できそうですね。

 

ではどれも思いつかない人がいたとしたらどうします?あるいは調べても出てこなかったとしたら?

そこであきらめるとその人のメタ知識はそこまでです。「ネット、辞書、人に聞く」もちろん調べ方によってはこれら3つでもほとんどの知識を得られるでしょう。

 

つまり「わからないことが出てきたときに分かるための方法を知っている」というのがメタ知識を持っている状態であり、僕らはそのメタ知識を深めるために大学に通うべきである、という話ですね。

 

このあたりの話は僕自身「ああ、大学入ってからは自分一人で解決しなきゃいけない答えの無い課題が増えたよな」と感じていたので非常に共感できました。

 

こういった話は非常に良い祝辞だったと思えます。

 

さて、時季外れではありますが話題となった東大入学式の祝辞をレビューさせてもらいました。

まとめると

「統計は大事(ブーメラン)」

「メタ知識をふかめるのは大事」

ということでした。

来年はどうなるのか楽しみですね。

 

ありがとうございました。