広東ゴルファー日記

香港とゴルフが好きな医学生投資家が毎日のことをつらつらと書く日記です。

【医学】話題の新薬ゾフルーザはもう使えない前編

こんばんは。広東ゴルファーです。

 

元号が発表されましたね。

令和

結構かっこいいなというのが第一印象です。素敵な時代になるといいですね。

 

さて、今回はまじめな医学的な話をしたいと思います。話題になったゾフルーザについて書こうと思っているのですが文章量的に今回は前半パート、インフルエンザウイルスとは、ということを書いていきます。

 

 

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1、そもそもインフルエンザウイルスってなに?

菌とウイルスの違い

まず、大前提としてゾフルーザやタミフルと言った薬剤はインフルエンザウイルスに対する薬です。当然ですが、インフルエンザウイルスにしか効果がありません。よく、溶連菌、肺炎ブドウ球菌感染症などと言いますが、こちらは文字通りですのでウイルスとは全く別物となります。

大きさ

何が違うかというといろいろと違うのですが、まずは大きさでしょう。以前、風邪にはマスクが無効という記事を書きましたが、風邪はウイルス性の感染症だからですね。

cantonesegolfer.hatenablog.com

 ウイルスは小さすぎてマスクの網目を貫通してしまうということでした。それに比べて細菌は大きいのでマスクでブロックできます。まあ、結核菌とかはもっと細かい目のマスクが必要ですが。

機能

大きさが違うとできることにも違いがあります。細菌は比較的大きい微生物ですので毒素を出したり、体の組織を分解したりすることができます。一方でウイルスは基本的にはできません。

 

ウイルスはあたかも生き物かのように考えられがちですが、その実ただのDNAやRNA(DNAの親戚)がカプセルに入って浮遊しているだけなので、生き物かどうかは明言できません。

え、毒素出したり分解したりしないならなんで風邪は辛いの?という疑問が出ると思います。

これはウイルスが体に侵入した際に私たちの体の細胞をウイルス生産工場に変化させてしまうからなんですね。それに対して体の防御機構がはたらくためにしんどい、というわけです。

 

インフルエンザウイルスの感染と症状

まあ、インフルエンザに感染したことがない人は少数派でしょうからサラッと行きますね。

基本的に経気道的に、つまり喉や鼻から肺を通じて体内に侵入してきます。そして細胞をインフルエンザウイルス工場に変化させて自分たちを増殖しようとします。

 

それに対してウイルスそのものをマクロファージがバクバク食べたり、ウイルス工場となったもともと自分の細胞だったものをキラーT細胞が攻撃したりします。そういった防衛が体の中で起きているので発熱、頭痛、咳、関節痛といった症状が現れます。

 

ワクチンは何をしているのか

さて、インフルエンザを防ぐために予防接種が行われています。予防接種では私たちの体に何が起きているのでしょうか?

 

人には体の中に一度入ってきた侵入者を記憶する機能があります。これを免疫記憶と言います。何のために免疫記憶があるのかというと「一度戦った敵を次は瞬殺するため」です。

 

初めてのウイルスや細菌はいわば奇襲です。体からすると「うわっ、なんだこいつ」となりながら戦うことになります。小さい子がやたらと熱をだしたりするのはこのためです。毎日のように体の中に入ってくる侵入者は全員初見ですから必死に戦わなくてはならず、熱が出るということです。

 

これが年齢を重ねてくると免疫記憶がはたらいて「あ?また来たの?お前の弱点はそこだ!」という感じで瞬殺してくれるようになります。ワクチンはこの弱点を体に教えるための存在というわけです。実際に活動しているウイルスを弱体化した生ワクチンと、ウイルスの死体で感染のリスクのない不活性化ワクチンがあり、それぞれ目的別にもちいられます。

 

生ワクチンはウイルスを直接体内に入れるわけですから掃討しても一部が残り、また掃討し、残り、という形で一生免疫記憶が続きます。不活性化ワクチンはウイルスが体内で増えないため一度掃討して終わりです。免疫記憶は記憶と似ていて忘れてしまうこともあるため不活性化ワクチンは定期的に摂取することになります。

 

インフルエンザウイルスのワクチンは不活性化ワクチンです。これは毎年流行するインフルエンザウイルスの型が少しずつ違うからです。不活性化ワクチンでも数年単位で免疫記憶は持続すると言われていますのでわざわざ生ワクチンじゃなくても大丈夫、ということです。

 

ということでここまではインフルエンザウイルスの概説とそのワクチンについてでした。後編では話題となったゾフルーザについて書いていきますね。

後編↓

 

 ↓もっと免疫について知りたい!という方は僕ら医学生が使用する教科書をお勧めします。めっちゃくちゃ読みやすいですから一般の人にもおすすめです。

休み時間の免疫学 第2版 (休み時間シリーズ)

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 お読みいただきありがとうございました。